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第1章 かなしい蝶と煌炎の獅子 〜不幸体質少年が史上最高の王に守られる話〜
潜入17
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さてそれではもう一戦、と十一戦目に臨もうとするも、どうやら少々やりすぎたようで、その頃にはもう、男に勝負を挑んでくる者はいなくなってしまった。これは困ったぞ、と、仕方なく別の遊戯に移ろうとした男だったが、歩み寄ってきた気配に、ぽん、と肩を叩かれ、振り返る。
「何か?」
振り返った先に居たのは、年配のディーラーだった。胸につけている名札をちらりと見れば、ディーラーの中でも上の立場の者であることが窺えた。
「いえ、お客様、本日は非常に幸運でいらっしゃるようで」
「ああ、たまたまだとは思うが、やはりツキが来ていると楽しいものだな」
「それは何よりでございます」
にこりと微笑んだディーラーだったがしかし、男には彼が心の底から笑っている訳ではないことがよく判った。
どの道、そろそろ来る頃合いだと思っていた。男は誓ってイカサマなどしていないが、あのゲームでここまで勝ち続けるとそう思われるのは当然だろう。イカサマをする必要など一切ないほどの強運の持ち主なのだ、と言って納得してくれるような相手ではないし、それで納得してくれる相手の方が珍しい。
「ぜひとも一勝負、お願いできませんか?」
お願いできませんか、と言ってはいるが、男が勝ち越しているこの流れでは断ろうにも断れない。裏カジノに来る客のほとんどは、それなりに権力のある人間だ。こういった場で誘いを断っては、自分の顔に泥を塗ることになる。もともと断るつもりはなかったどころか、これが狙いだった男は、少しだけ渋る様子を見せた後、仕方ない風を装って頷いて見せた。
「有難うございます。それでは、勝負はぜひあちらのルーレットで」
「ルーレットか。久々だな」
構わない、と言ってディーラーの誘いに乗った男だったが、この時点で大体の展開は読めていた。
腕利きのディーラーは、望みのマスに止まるように球を投げられるという。大方、イカサマで稼がれた大金をイカサマで回収しようという魂胆なのだろう。男の場合はイカサマで稼いだ大金ではない訳だが。
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