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第1章 かなしい蝶と煌炎の獅子 〜不幸体質少年が史上最高の王に守られる話〜
煌炎8
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男と別れ、急ぎ足で目的のフロアに向かえば、少年の目に様々な染料が飛び込んでくる。見落としがないようにと少し時間をかけてフロアを巡った中で、一際強く少年の目を引いたのは、一角獣の角を削った粉末をたっぷりと含んだ染料だった。きっと、無色の染料に混ぜ込んだのだろう。真珠色のそれは、会場のライトの当たり方によって色を変えて煌めき、まるで虹をそのまま閉じ込めたかのように綺麗だった。
話には聞いたことがあったが、少年も実物は初めて見た。想像以上の美しさに、ほう、と息を吐き出して見惚れてしまう。しばし人の流れを妨げていることにすら気づかないままその色に見入っていた少年は、思い出したように掲示されている値段を見て、別の意味で息を吐いた。
ティースプーンふた匙で金貨一枚は、少年が手を出すには高すぎる。だが、それを理由に諦めるには、この染料は美しすぎた。
散々悩んだ少年だったが、真珠色の染料以外で買おうと思っていたもののおおまかな見積もりをした結果、ふた匙分だけであれば、なんとか残りの手持ちで買えそうだという結論に至った。今月の生活は本当にギリギリになってしまうけれど、それでも、どうしてもあの真珠色が欲しかったのだ。
結局、少年は自身の生活費を大幅に削って一角獣の染料を買うことに決めた。他の買い物を済ませているうちに売り切れてしまったら悲しいから、まずはこれを買ってしまおう。そう考えて少年は、商人に金貨を一枚差し出した。手持ちのリンカネット金貨はこれだけだ。残っているのは、ジュカイラ銀貨が十枚と、イルテアン銅貨が二十枚ほどだろうか。金貨は、銀貨で二十枚、銅貨で千枚分の価値を持つため、ふた匙ばかりの染料に金貨一枚をはたくのは、とても覚悟のいることだった。
そうして手に入れた染料の小瓶を大切にしまい、珍しく少しほっこりとした表情を浮かべた少年は、買い物の続きをしようと再びフロアを歩き出すのだった。
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