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第1章 かなしい蝶と煌炎の獅子 〜不幸体質少年が史上最高の王に守られる話〜
煌炎12
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淡い炎色の光を纏った剣を構え、男が再び駆ける。化け物の方も次の獲物を男に定めたようで、二対の腕を振りかざして向かって来た。男が敵の懐に入るよりも早く、固められた一対の拳が頭上から襲う。だが、男はそれを剣の柄で右殴りに弾いて、軌道をずらした。すかさず残りの二本の腕が男を掴もうと伸びるが、拳を弾いたときの力を利用して左に跳んで避ける。そのまま上手く化け物の脇腹に潜った男は、柄を両手で握り直し、がら空きの胴に刃を叩きこんだ。
じゅう、というゴムの焦げるような音と悪臭を放ち、刀身が化け物の肉に埋もれる。やはり、今度は刃が通るようだ。それをしかと確認した後の男の動きは速かった。前に大きく脚を踏み込み、化け物の手が己に襲い掛かる前に、前方へと両腕を振りぬく。炎の精霊の加護を受けた刀身は、まるで最初から戦場で躍ることを目的に作られた武具のごとく、分厚い肉と骨を断ち、巨体の胴を両断した。
切り口からは黒々としたおびただしい血が噴き上がり、辺りに激しく跳び散った。当然周囲の人間にも降り注いだそれに、しかし群衆は気にする余裕もなく、我先にと駆け出す。恐慌状態となった人々から男に対する礼はなく、寧ろ開けた道の真ん中に立つ男をまるで邪魔者であるかのように押しのけながら、群れは出口を目指した。
窮地を救った人間に対するものとは思えない仕打ちだったが、男に気にした様子はなかった。寧ろ、自分を注視しないでくれるのは好都合だった。
ちらりと目に入った自身の長髪の先は、既にどことなく赤みを帯びてきてしまっている。やはり戦闘は特によろしくない。どうしても気分が高まってしまい、目くらましが解けるきっかけになってしまうのだ。
さすがにまだ顔の造形までは晒されていないとは思うが、髪が腰に届くくらい長いことだとか、くせ毛なことだとか、そこら辺の情報は見て取れてしまうだろう。
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