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第1章 かなしい蝶と煌炎の獅子 〜不幸体質少年が史上最高の王に守られる話〜
煌炎15
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「私の魔力であればいくら使っても構わん。首都全域に散り、全ての戦火に潜り込め。可能な限り存在を気取られぬよう、徐々にで良い。あらゆる炎を司る精霊の誇りにかけて、僅かな種火すら残さず鎮火してみせよ!」
びりびりとした威厳すら感じさせる声が、朗々と響く。その瞬間、男の足元から激しい炎が噴き上がり、たちまちに四方へと迸った。
「ああこら! 存在を気取られるなと言った傍から派手に飛び出る阿呆がいるか!」
人の話をきちんと聞けと苦言を呈した男に、炎の精霊たちは、やたらと撒き散らしていた炎を慌てて掻き消した。まったく困ったことだが、彼らは男の命を受けたことに歓喜し、はしゃいでいるのだ。そうでなくとも、火霊たちは四大精霊一活発で目立ちたがりやである。そこに大好きな彼からの頼みごとが加われば、こうなるのはある程度予想がついていた。
だから男は、身元を隠している時にはあまり火霊魔法を使わないのだ。だが、現状を打破するにはこの手段しかない。事実、奔った火霊たちは間違いなく仕事を成し遂げてくるだろう。郊外にそれなりの兵力があるだろうことを考えれば、これくらいの手助けで、あちらの騒動は比較的問題なく収まるはずだ。残るは、この場だけである。
貿易祭や人々への被害も気にならない訳ではないが、男が何よりも心配しているのは、刺青師の少年のことであった。
折角ここまで順調に事を進めているのだから、ここで全て無駄になるのだけは避けたい。丸々太らせた子山羊には、きちんと役目を果たすまでは生きていて貰わねば困るのだ。
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