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第1章 かなしい蝶と煌炎の獅子 〜不幸体質少年が史上最高の王に守られる話〜
煌炎16
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飾りだった剣を携え、男は噴水の元を目指す。一部の火霊は、既にこの会場の炎の中に紛れたのだろう。己から僅かずつ魔力が喰われているのを感じた。
広大な首都の全域に渡り魔法を行使することなど、通常であれば長い詠唱を以てしても不可能なことだったが、男にとってはどうということではない。それどころか、詠唱すら必要のない程度には容易なことであった。
彼は、その魂を炎に愛されている。故に、炎が彼を傷つけることはなく、炎が彼を想わないことはない。だが、炎の愛情を存分に浴びて行使する火霊魔法は、すなわち、折角魔法で隠していた彼の魂の輝きが漏れ出てしまう行為でもあった。
その身の魔力を喰われるごとに、彼を覆っていた薄靄が晴れていく。髪の毛の先から薄衣を脱ぐように洗われていった先にあるのは、くすんだ炎のような色を湛える長髪。癖の強い赤銅色の髪は、ようやく晒された素顔に、とても似合っていた。
美形とは言えないものの、立派な体躯に見合う、精悍に整った顔。そしてそこに二つ嵌るのは、まるで炎を溶かし込んだように橙色がかった、金色の瞳。
身を覆う霧が全て消えた後に残ったのは、炎を思わせる男の姿だった。
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