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第1章 かなしい蝶と煌炎の獅子 〜不幸体質少年が史上最高の王に守られる話〜
煌炎19
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そうやって心を癒していた少年は、ふと、小瓶の奥、高みにある天井に目が行った。何かが意識に引っかかったのだ。疑問を抱いたまま天井に視線をやり、眩しさをこらえるように左目を細めて見れば、白い天井に何か黒い線のようなものがあるのを見つけた。
(あれ、なんだろう……?)
少年が思うのと、何かが割れるような大きな音が響いたのが、同時だった。
あまりにも耳にうるさい音に少年の肩が跳ね上がり、そこからはあっという間だった。天井に亀裂が走り、今にも割れそうになる様子を見ていた少年にすら、何が起きているのかすぐに理解できなかったのだ。頭上になど一切気を配っていなかった他の人間たちは、よりこの状況に混乱しているようだった。
少年が現状把握に努めようとした、その時。
突如、形容しがたい耳障りな鳴き声のようなものが四方から響いた後、少し離れた場所で、魔物だ、と誰かが叫ぶ声が聞こえた。その声を皮切りに、騒ぎは爆発的に膨れ上がり、ほんの僅かの内に、気づけば夜市全域がパニックに陥っていた。
ある者は手に取っていた商品を放り投げ、またある者は店を放置して飛び出し、人々は誰もが安全な場所を求めて逃げ惑い出した。
少年は爆音のように耳を叩いた騒ぎに数瞬忘我に陥ったが、邪魔だと誰かから突き飛ばされた衝撃に、はっと我に返る。ぶつかってきた相手は既にどこにもいない。誰一人、その場に留まろうなどと考えている者などいはしなかった。
留まっていればいずれ死ぬ。
その明確な事実をようやく受けとめた少年は、小瓶を袋に戻ししっかりと抱え、周囲から数拍送れて、走り行く人々の群れへと飛び込んだ。
(ここにいたら駄目だ)
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