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第1章 かなしい蝶と煌炎の獅子 〜不幸体質少年が史上最高の王に守られる話〜
煌炎27
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だがどうだ。今男の全身を駆け、満たしているそれは、確かに心の底から生まれた本当の感情だった。己が生きるために何を捨ててでも誕生を拒むべきだった感情が、生まれ落ちてしまったのだ。
これは男も少年も知らない事実。少年の異形の瞳が男の本質、魂そのものを見透かして溢れた純粋すぎるまでの賛美の言葉が、男の魂に届いてしまったが故に生じてしまった、想定し得なかった事態。
己自身にすら隠し続けていた本当を、こんなにも簡単に見透かして。男すらも知らない自分の本質を、こんなにも美しいと讃えて。
それは、男がこれまで浴びて来た薄っぺらな上辺だけの言葉とも違うし、多くの人々から向けられる信仰にも似た崇拝の言葉とも違う。こんなにも純粋な、たったひとつの生命に対する言祝ぎなど、男はただの一度も受けたことがない。
そして男は気づいてしまう。己の全身を駆ける、いっそ熱いほどの温度を孕んだこれが、歓喜であると。
美しいと言われた。この身が、この魂が、もしかするとこの生き方すらも、世界中の何よりも尊く美しいものだと。
その瞬間、男の身を巡る熱が弾けた。赤銅の髪がみるみる内に毛先から色を変え、夜闇に煌めく炎のような不思議な色を伴って輝き出す。太陽を滲ませたような金の双眸はよりいっそう光を強め、揺らぐ橙色は燐光を放って少年を見つめ返した。
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