アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
第1章 かなしい蝶と煌炎の獅子 〜不幸体質少年が史上最高の王に守られる話〜
煌炎31
-
だがまあ、腕の中の子を守るという意味でも、兵が駆けつける前に事を済ますという意味でも、火霊魔法で処理するのが一番だろう。男は、言ってしまえばそこまで強くもないこだわりのために大義を捨てるような愚か者ではなかった。
前を塞ぐ魔物を適度に焼き払いながら、男が進む。それにしても、剣を持っていたときよりも遥かに単純作業だ。火霊はこちらがいちいち指示を出さずとも勝手に敵を片付けてくれるし、魔物は男が警戒するほど強い敵ではないし、こうなるともうただ前へ歩けば良いだけである。勿論、首都全域に巡らせた火霊の分も加えれば、多少の魔力の消費はある。だが、それだけだ。
他の属性の魔法ではそんなことなどないが、火霊魔法による男の魔力消費は僅かなものであった。男自身なぜそこまで自分の火霊魔法に対する適性が高いのかは知らなかったが、まあたまたま火霊に物凄く気に入られただけだろう程度にしか考えていなかったし、大した興味もなかった。
やはり衛兵の目をなんとかごまかして自分の剣を持ち込むべきだったなぁ、などと呑気に考えながら炎舞う中を歩んでいた男は、ようやく辿り着いた広場を見て、少しだけ驚いた表情をしてみせた。
「近くで見ると、やはり大きいな」
巨大な噴水よりも遥かに大きな魔導陣に、男は困った顔をした。
「さて、どうするか。これだけ巨大な魔導陣ともなると、剣の一振りで壊せるものではないぞ」
と言っても、その剣もすでに融けてしまっているからあまり関係はないが。
男が思案する間にも、青白く輝く魔導陣のいたるところから魔物が溢れて来る。これだけの量の魔物をそこそこ早いペースで送り込んでくるということは、この魔導陣は男が思っていた以上に厄介な代物なのかもしれない。
「いや、異なる次元から召喚する陣ならば圧巻だが、この世界にいるものをただ転送するだけならば、そこまで驚くほどのものでもない。そもそも次元を渡る術は限られている。魔導でそれを成すのであれば、もっと大がかりな術式が必要なのではないだろうか。……とすると、やはりこれは次元転移魔導ではなく、ただの空間転移魔導か」
そう言いながら男は確かめるような視線を火霊に向けたが、火霊は首を傾げただけだった。それはそうだろう。精霊が魔導に詳しい訳がない。
「ふむ。詳しい解析をしたいところだが、なにせ時間がない。だが、さすがにこの大きさの魔導陣を目立たずに破壊することはできんな……」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
69 / 228