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第1章 かなしい蝶と煌炎の獅子 〜不幸体質少年が史上最高の王に守られる話〜
煌炎34
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ああ、早く目を覚まさないだろうか。早くその瞳に私を映してくれないだろうか。左目だけでも良いが、できれば両の目でしかと見て欲しいし、その目を見つめ返したい。眼帯で隠しているということは、きっと右目は少年にとって忌むべきものなのだろうが、男にとってはあの異形の瞳すらも愛おしい。あの不思議な瞳は、大方ヒトではない何かの血が混じっているが故のものだろう。だが、それが何だというのか。真っ直ぐに男を見つめた瞳はまるで夜空に浮かぶ月のようで、美しくすらあった。
暫くの間少年の髪を梳いていた男だったが、その頬を風が擽ったのを合図に、名残惜しそうに手を離した。目くらましの魔法をかけ直すために術者が訪れたことを、風霊が教えてくれたのだ。本音を言えばこの少年には今の自分を見て貰いたいところだが、そうはいかない。
「すぐに戻る。ゆっくり眠ると良い」
そう言って少年の額にくちづけを落としてから、男は静かに部屋を出て行った。
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