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第1章 かなしい蝶と煌炎の獅子 〜不幸体質少年が史上最高の王に守られる話〜
煌炎35
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ふ、と浮上した意識に、少年はどこかとろりとした表情でゆっくりと瞼を押し上げた。
夢を見ていた気がする。よく覚えていないけれど、なんだかとてもきれいなものを見たような。あれ以上にきれいなものなどこの世に存在しないのではないだろうかと思うほどにきれいな、炎のような、太陽のような。ああ、あれは何だったのだろうか。きれいで、温かくて、それから、優しかったような。
ぼんやりとした記憶をなぞっていた少年は、数度の瞬きの後、目に映っているのが見知らぬ天井であることに気づき、ばっと跳び起きた。慌てて周囲を見回せば、少しだけ驚いた表情をした男が目に入った。顔のぼやけた、記憶に残らない男。少年の店にいつも訪れれ邪魔ばかりしていく、あの男だ。
ここは何処なのか。なぜ貴方がいるのか。
訊こうと思うことは沢山あったが、それよりも少年は反射的に右眼に手をやっていた。おぼろげな記憶が、人混みの中眼帯を落としたことを訴えてきたのだ。さっと青褪めた少年だったが、指先にごわごわした安物の布が触れたのを感じて、ほっと息をついた。だが、何故か違和感がある。確かめるように眼帯をぺたぺた触れば、どうやら眼帯の紐は千切れてしまっていて、別の紐で上から押さえるようにして頭に巻かれているようだった。一体何故こんなことに、という少年の疑問に答えたのは、穏やかな笑みを浮かべた男だった。
「紐が駄目になってしまっていたのでな。私の手持ちのもので適当に結んでしまったのだが、良かったか?」
「え……、ああ……、……ありがとう、ございます……」
取り敢えずといった風に礼を言って微笑んだが、内心はそれどころではない。他人が結び直した紐など信用できないし、そうでなくとも応急処置のようなものだ。一刻も早く自分の手で付け直したかった。
「ところでここは……?」
「うん? ああ、私が寝泊まりしている宿だ。本当は自宅まで連れて行ってやりたかったのだが、お前の家を勝手に開けるのも忍びなくてな。仕方なくここへ連れて来た。安宿故にベッドも固いだろう。すまないな」
「いえ、そんな。ありがとうございます」
いまいち事態が飲み込めないが、どうやら意識を失った自分をここまで運んでくれたようだ。
「身体の調子はどうだ? どこか痛むところは?」
「いいえ、特にはありません」
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