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第1章 かなしい蝶と煌炎の獅子 〜不幸体質少年が史上最高の王に守られる話〜
煌炎40
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「ところで、名の響きからすると、キョウヤはもしかしてこの大陸の生まれではないのでは?」
「……よく、お判りですね」
「やはりそうか。余り耳に馴染みのない音だと思ったのだ。私には少し発音も難しいしな。どこの生まれなのだ?」
「東の方の国です」
声が固くならない注意する。過去や生まれを詮索されるのは不快だ。少年にとってそれらは思い出したくないものであり、他人に晒したいものでもない。だが、男はなおも話を続けてきた。
「東の方か。……確か、リアンジュナイル大陸から遥か遠くに小さな島国があったな。そこだろうか?」
「ふふ、どうでしょうか」
男の言葉に少年は小さく笑ってみせたが、内心ではぞっとした薄ら寒さを覚えていた。というのも、男が挙げた小国は、事実少年の生まれ国だったのだ。だが、本当にこの大陸からは遠く離れた国だ。あまりにも小さくて、リアンジュナイルでは知っている人間の方が少ないだろう。だというのに、男はそれを言い当ててきた。
「そう怯えないでくれ。かつて趣味で大陸外を旅していた時期があってな。そのときにその国にも訪れたことがある。それだけだ」
「別に怯えてなんかいませんよ」
「そうか? それならば良いのだが、……あまり忌避されると、流石の私も悲しくなってしまう」
困ったような笑みを浮かべた男に、少年も合わせて少しだけ困った笑顔を作っておいた。
「そのようなつもりはないのですが、すみません」
「ああいや、お前に謝罪をさせたい訳ではないのだ。すまない」
「いいえ、こちらこそすみません。僕は気にしていないので、貴方もどうぞお気になさらず」
「そうか。いやしかし、お前が私を忌避するのも無理はない。お前の目には私の姿が曖昧に映っているのだろう? 生き物は正体の判らぬものを恐れるようにできている。つまり、今の私はお前にとって恐れるべき対象だということだ」
「……はぁ」
確かにそれもあるだろうが、それはあまり大きな問題ではない気がするのだが。どちらかというと、目の前の男の在り方自体が不鮮明なのが原因なのではないか。
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