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第1章 かなしい蝶と煌炎の獅子 〜不幸体質少年が史上最高の王に守られる話〜
煌炎41
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「だが私にもやむにやまれぬ事情があってな。今は目くらましの魔法をかけて詳細な容姿を認識できないようにしてあるのだ。いや、勿論その時が来たならば必ず本来の姿を見せよう。だから、今暫し待っては貰えないだろうか?」
「……そうですか」
にこり。
大丈夫。いつも通り微笑めた。が、
(なんなんだこの人……)
待てと言われても。別にこの人の容姿なんて欠片も興味はないし。なんでそれを心底申し訳なさそうな声音で言ってくるのだ。気持ち悪い。
まるで自分が相手の本当の姿とやらを見ることを渇望しているような扱いだったが、これ以上深く考えると余計に頭が痛くなることは明らかだったので、忘れることにした。
いやしかし、目くらましの魔法とやらをかけているということは、何か人に見られては困る姿をしているのだろうか。実は人間ではないとか、実はお尋ね者であるとか。もしかすると精神に異常をきたして収容されていたところを逃げ出した患者なのかもしれない。一番有り得る気がする。そしてそれが一番危ないパターンな気がする。精神異常者なのに目くらましをかけて逃げる知能は残っているなど。
微笑みの裏でそんなことを考えていた少年に、男が苦笑する。
「確かに目くらましは私の正体を隠すためにかけているが、やましいことがある訳でないぞ?」
「はい」
にこりと微笑んだものの、頭のおかしい人間の言うことなど信用できるはずがない。
「……精神に異常をきたしてはいないのだがなぁ」
小さな呟きが聞こえた気もしたが、聞かなかったことにした。代わりに、歩く速度を少しだけ上げる。
一刻も早くひとりになって、眼帯の状態を確認して、そしてゆっくり眠って嫌なことは忘れてしまおう。幸い家はもうすぐ近くだ。そんなに長くないはずの道のりなのに、この男のせいで酷く疲弊してしまった。
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