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第1章 かなしい蝶と煌炎の獅子 〜不幸体質少年が史上最高の王に守られる話〜
ふってわいた幸福1
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カーテンの隙間から差し込んだ朝の陽射しに、少年はベッドからもぞりと起き上がった。寝起きで少しぼーっとしながら、ベッド脇に置いてある眼帯に手を伸ばす。昨夜は心身ともにへとへとだったが、これだけはと繕ったのだ。
元々使い込んでくたくたになっていた眼帯は、昨夜の一件を経たことによって一層酷い有様になっていた。頑張って繕ってもボロ切れよりはマシという程度にしかならなかったのは少し悲しいが、機能はするので良しとする。というよりも、夜市でかなりのお金を使ったせいで、新しい眼帯を買う余裕がないので、良しとするより他はないのだ。
はぁ、と溜息をついてから、少年は身支度を整えて開店に向けての準備を進めた。確か今日は三人ほど予約が入っていたはずだ。尤も、昨日の魔物騒動の直後に来るかどうかは判らないが。
そう思っていた彼だったが、意外にも顧客は皆、時間通りに店を訪れた。作業の合間に客から聞いた話によると、昨夜の事件は規模の割に解決までにかかった時間が驚くほど短かったらしい。なんでも、軍が辿り着いたときには相当数の魔物が炎熱魔法か何かで焼け死んでいたとか。状況的に魔物同士が仲間割れを起こしたのではないかと考えられているらしいが、所詮流れている噂に過ぎないそうなので、真偽のほどは定かではない。
襲ってきた魔物たちはどうやら別次元から渡って来た魔物らしいとか、急な襲来にも見事に対応したギルガルド王はやはり素晴らしいだとか、もっと色々と話された気がするのだが、少年には興味のない話だったので適当に返事をしながら聞き流してしまった。とにかく、やはり今日の話題は昨夜の魔物騒動一色であった。
(それにしても、皆こういう話好きなんだなぁ)
夕方、最後の予約客を見送ってひと息ついた少年は、自分用のお茶を淹れながらぼんやりと思った。
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