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第1章 かなしい蝶と煌炎の獅子 〜不幸体質少年が史上最高の王に守られる話〜
ふってわいた幸福2
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今日は予約客だけでなく、少年が毎月夜市に通っているのを知っている顧客などが好奇心からか事件当時の話を聞きに訪れたりもして、珍しく慌ただしい一日だった。
(そういえば、今日はあの人来てないな)
まあ、昨夜の意味不明な発言のことを思うと来ないに越したことはないのだが。
そんなことを考えながらソファに座ってのんびりお茶を飲んでいると、カランカラン、という音がして入り口の扉が開いた。
「いらっしゃいませ」
身に着いた条件反射でそう言って扉の方を見れば、大きな紙袋を腕に抱えたあの男がいた。
「こんにちは、キョウヤ」
にこにこと懐っこい笑顔で言った男に、少年の方も白熱電球の笑みで応える。
「こんにちは。今日はそろそろお店を締めようと思っていたのですが、何かご用でしょうか?」
「ああ、大したことではないのだが、少しだけ時間を貰えるか?」
「……どうぞ」
暗に帰れと言ったのだが、伝わらなかったのだろうか。いや、この男のことだ。気づかないふりをしている可能性の方が高い。
「それで、何のご用でしょう?」
「ああ、実は今日は一日その辺の市場を回っていたのだが、昨日のような貿易祭でなくともギルガルドには珍しい品物が多いのだな。色々と目移りしてしまって、気づいたらあれやこれやと買い込んでいたのだ。見ろ、大荷物だろう?」
「それは、楽しまれたようで何よりです」
確かに、体格が良い男が片腕一杯に抱えるほどの紙袋だ。何やら大量に物が詰まっていそうである。だが、だからと言って何故ここに来る。大人しく宿に帰れ。
「いやぁ、これだけ買ったは良いが、私では使いようがない物の多いこと多いこと。まあ見てくれ」
「え、あの、」
少年が何かを言う前に、男が勝手に紙袋から物を取り出して接客用の長机に置いていく。
(なんなんだこの人。自慢でもしにきたのかな……)
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