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第1章 かなしい蝶と煌炎の獅子 〜不幸体質少年が史上最高の王に守られる話〜
ふってわいた幸福4
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「あ、あの、こんな高価なものを頂くわけには、」
「私には使いようがないのだから、貰ってくれると嬉しいのだが。む、それとも気に入らなかったか?」
「いや、そんなことはないですけれど、」
なにせ昨夜は、懐が酷く寂しくなった割に得た物はゼロというなんとも悲しい結果に終わったのだ。正直に言えば、くれると言うなら貰いたかった。男が持ってきた染料の中には、昨夜補充のために買ったけれど失くしてしまった色もある。それ以外の染料だって、あって困ることはない。だが、だからといって、そうですかありがとうございますと受け取る訳にはいかない程度には品物の金額が高すぎた。
「そんなことがないのなら受け取ってくれ。私が持っていても邪魔になるだけのものだ」
「でも、」
尚も渋る少年に、男はふむ、と言って少し思案するような顔を見せた後、良いことを思いついたと言って笑った。
「それでは、染料を渡す代わりに私と出掛けてはくれないか? 確か明後日は定休日だっただろう?」
「え、ええ、明後日は休みですけど、それでお礼になるとは思えないのですが……」
「何を言う。愛する相手と出掛けられるのだ。これ以上の礼はないだろうに」
「はぁ……」
まだ言ってるのかこの人。もしかすると昨夜の騒動の際に頭でも打ったのかもしれない。だがまあ、一緒に出掛けるだけでこれだけの染料が貰えるのなら儲けものではある。この男のことは相も変わらず苦手というか、ますます苦手になってきているが、それでもこの提案は魅力的だった。
「本当に、一緒に出掛けるだけで良いんですか?」
「ということは、デートの申し出には応えて貰えるのだろうか」
「ふふ、デートですか。冗談がお上手ですね。それは置いておくとして、ご一緒すれば貴方が満足するのであれば、お付き合いします。明後日ですね?」
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