アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
第1章 かなしい蝶と煌炎の獅子 〜不幸体質少年が史上最高の王に守られる話〜
ふってわいた幸福6
-
「ああ、済まない。時間を取らせてしまったな。私の用向きは終わったし、明後日のことを決めたら帰るとしよう。そうだな、店がいつも開く時間に迎えに来ても良いだろうか?」
「はい、お待ちしています」
「行く場所も私が決めてしまって良いか?」
「……あまり、遠くない場所でしたら」
「承知した」
染料以外の品を紙袋に戻し終えた男が、来た時のようにそれを片腕に抱える。
「ではな」
「はい。あ、あの、」
そのまま立ち去ろうとした背中に慌てて声を掛ければ、不思議そうな表情をした顔が振り返った。
「染料、ありがとうございます」
「きちんと見返りを貰うのだから礼などいらんというのに、キョウヤは礼儀正しい子なのだな。いや、喜んで貰えたのなら私も嬉しいよ」
言葉通り嬉しそうに笑った男は、ひらりと手を振ってから店を出て行った。
残された少年は、ほっと息をついてから、テーブルの上に残された染料たちを見る。その中でも一際目立つ真珠色が詰められた瓶を手に取り、うっとりとした表情を浮かべた。ああ、なんて綺麗なのだろう。しかし、あの男はどうやってこれを入手したのだろうか。とてもではないが、一般の市場に出回る品ではないと思うのだが。
(まあ良いや。手に入ったんだから)
明後日のことを考えるとちょっとだけ気分が沈んでしまいそうだったが、それでもこれを手に入れられた幸福で一杯の少年は、今夜は気持ち良く眠れそうだと思った。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
87 / 228