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第1章 かなしい蝶と煌炎の獅子 〜不幸体質少年が史上最高の王に守られる話〜
ふってわいた幸福7
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宿に帰るのかと思われた男は、しかしそうはせず、刺青師の少年の店がある場所よりも更に首都の中心から離れた郊外に来ていた。その中でも人通りのない裏路地のような場所に入り込み、抱えていた紙袋を地面に下ろす。そして、少年に渡さなかった品物たちを次々と取り出して無造作に地面に並べていった。
(さて、この余分なものたちをどうしようか)
取り敢えず使いそうな人間に譲るか、と仕訳をしながら、別に所持していた布袋に詰め直しているところに、上空から綺麗な囀りが聞こえた。どうやら伝達用に使っている鳥が戻ってきたらしい。
「おお、丁度良かった」
ひらりと小さく手を振れば、陽が落ちて暗いというのに、鳥は迷うことなく男の元へと滑り降り、その肩に止まった。ぴぴ、と小さく鳴いた鳥の頭を撫でてやってから、男はその脚に括られている手紙を受け取って目を通した。
「ふむ。向こうはつつがない様子で何よりだ。この様子ならば返事の手紙もいらんだろう。取り敢えず、私の方もなんとかするとだけ伝えてくれ。ああそうだ、ついでにこれも持って帰っては貰えんか? 適当に分けて貰って構わんのだが、髪留めなどはレクシィに良さそうだし、魔術鉱石や化粧道具はグレイあたりに渡せば有効に使いそうだ」
そう言って差し出された荷物に、鳥が首を傾げる。自分の身体の二倍はある大きな布袋を前に、このままでは運べないと訴えているのだ。
「勿論、心得ているとも」
そう言った男が、鳥の目の前ですっと片手を振る。すると、手が滑った後からふわりと炎が生じ、穏やかな渦となって鳥の全身を包み込んだ。しかし、熱に晒された鳥から悲鳴が上がるようなことはなく、数瞬後、炎に呑まれた中から大きな翼が広がり、内側から渦を弾けさせた。
炎の渦が掻き消して現れたのは、先ほどの鳥の面影が残る、大きく美しい炎の鳥だった。
「その姿ならばこの荷物も運べるだろう。魔力と炎を多めに供給しておいたから、グランデルまで十分保つはずだ」
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