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第1章 かなしい蝶と煌炎の獅子 〜不幸体質少年が史上最高の王に守られる話〜
ふってわいた幸福8
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男の掌に頭を撫でられて嬉しそうに囀ったこの鳥は、その羽毛を炎で構成する、火炎鳥と呼ばれる幻獣である。幻獣に分類されている以上、一般の人間が目にすることは少なく、飼育された例もごく僅かしかない生き物なはずだが、男はどういう経緯かこの火炎鳥を伝達手段として使っているようだった。普段は小鳥のような姿でいる火炎鳥に、炎と魔力を与えることで本来の姿に近づけ、重い荷物を運んでもらおうという腹づもりらしい。
「それでは任せた。ああ、あまり目立たぬようにな。こっそり行くのだぞ」
ぽん、と背を撫でてやれば、火炎鳥は心得たというように頷いて、ふわりと上空へと滑っていった。さすがに陽が落ちたこの時間にあの姿は目立つが、そのために人気のない場所を選んだのだから、恐らく大丈夫だろう。それに、あの火炎鳥は火霊のようにやたらめったら騒ぎ立てて暴れ出すようなこともない。本人にできる最大限の努力を以て、ひっそりとグランデルに帰ってくれるはずだ。
(さて、私は明後日のデートの場所をしっかり吟味しなくては。これはもしかすると明日一日がかりかもしれんぞ)
何せ愛する子とのデートだ。それはもう万全を期して臨むべきである。
年若い店主の好みそうな場所を考えながら、明後日が待ちきれないといった様子で男は帰路につくのだった。
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