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第1章 かなしい蝶と煌炎の獅子 〜不幸体質少年が史上最高の王に守られる話〜
デート?1
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コンコンと扉を叩く音に、若き店主は小さく溜息をついた。一日は始まったばかりだというのに、既に気が重い。
今日は店はお休みだ。そして、男との約束の日でもある。よって、今扉を叩いたのは間違いなくあの、ロストとかいう男だろう。
もう一度だけ溜息を吐き出した少年は、顔に笑みを貼り付けて扉を開けた。
「おはようございます。お早いですね」
「ああ、早くお前に会いたくてな」
「そうですか」
訳の判らない戯言は流しておくことにする。
しかし、朝から出かけるとは、一体どこに行く気なのだろう。余り遠いところは困ると言ったはずだが。
「それでは行こうか」
「あ、あの、行くって、どこへ行くんでしょうか」
「それを言ってしまってはサプライズ性が薄れてしまうではないか。なに、お前が嫌がるような場所には連れて行かんよ。安心してくれ」
別にサプライズ性なんて求めていないし、もっと言うと、出かける先が不明なまま連れ回されるのは心許なくてあまり好ましくなかったのだが、これは貰った染料へのお礼だ。可能な限り相手の機嫌を損ねないように振舞うべきだろう。
そう思って大人しく従った少年が連れてこられたのは、少年の店よりずっと都市の中心に近い場所にある、錬金術系統の店が多く立ち並んだ商店街だった。そういえば、この通りにある店の品物はどれも精巧な造りのものばかりで、少年はその美しい造形にちょっと心惹かれたりもしていたのだった。ただ、錬金術による生産品は魔術機構を持っているものばかりで、製作が非常に難しいため、高価な品が多い。そのため、店の方もそれに見合った高級な外装や内装をしている場合がほとんどだ。男に連れて来られたこの通りは特に、ギルガルド内でも貴族御用達と言われるような店が多く並ぶ場所で、とてもではないが少年が立ち入れるような雰囲気ではなかった。故に、一度店の中を見てみたいと思いつつも、みすぼらしい自分では足を踏み入れようという考えすら浮かばなかったのだ。
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