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第1章 かなしい蝶と煌炎の獅子 〜不幸体質少年が史上最高の王に守られる話〜
デート?2
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魔術にも錬金術にも詳しくない少年は、これ以上のことなど知る由もないが、錬金術とは、物と魔術を繋ぐ要となる技法である。現象を引き起こす魔術式を核とし、その式を形ある物に繋ぎとめる。その後様々な技術を駆使して、魔術師の手を離れた後も作動する品物を作るわけだが、魔術師の中でもこの段階、すなわち錬金魔術師にまで至れる者は決して多くない。更にここギルガルド王国以外の国では、魔法適正者が多いため魔術と錬金術があまり栄えていないことも相まって、錬金術商品は非常に高価なのである。
つまり、この商店街の店々は、広大なリアンジュナイル大陸でも数少ない錬金魔術師によって作られた品物を並べているのだ。
しかし、それを知っているのか知らないのかは判らないが、半歩前を歩く男に躊躇う様子はなく、少年は困惑してしまった。改めて見た男は、そりゃ体格や纏う風格のようなものはなんだかとてもすごそうに思えるけれども、服装は平民層の傭兵のもので、とてもではないが高級店に入るのに向いている格好だとは思えない。これではつまみ出されてしまうのがオチではないだろうか。
少年の心配はやはり的中したようで、取りあえず適当に眺めてみようかと言った男が立ち並ぶ店の一軒に入ったところで、警備員らしき男たち三人に囲まれてしまった。一緒にいる彼ほどではないが背が高く体格も良い大人に囲まれて、少年は思わず首を竦める。威圧感のある大人は苦手なのだ。
「お客様、何の御用でしょうか」
「お客様に対する態度ではないな。この子が怯える。やめてもらおうか」
少年を守るように背に隠した男が言うが、警備員たちは飽くまでも場違いな平民層を追い出す姿勢をやめようとはしなかった。
だが、こういう対応になるのも仕方がない。高級店というのは、商品の良し悪しは勿論のこと、貴族への商売である以上信頼で成り立っているところがある。そんな店にとって、窃盗や強盗は金銭以上の損失をもたらすことになるのだ。故に、店にふさわしくないだろう客を入口の時点で追い返すのは重要かつ妥当な判断である。
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