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第1章 かなしい蝶と煌炎の獅子 〜不幸体質少年が史上最高の王に守られる話〜
デート?5
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「では、キョウヤを頼んだぞ」
「あ、いや、だから、あの、」
プレゼントなんて貰う訳には、という言葉を告げる前に、にっこり微笑んだ男は店を出て行ってしまった。そして、その背を追うべきかどうか迷う暇もなく、店員によって店の奥へと案内されてしまう。他人の前で肌を見せるなんて死ぬほど嫌だと身構えた少年だったが、案内された場所は個室だった。個室と言っても高そうなテーブルやらソファやらが置かれていて、どちらかというと接客室のようにも見えるが、入口に更衣室と書いてあったからそういうことなのだろう。つまり、店員が持ってくる服をここで着ればいいらしい。それすらもあまり好ましいことではなかったが、今更どうこうする訳にもいかず、少年は指示されるままに高そうな服を着たり脱いだりする羽目になったのだった。
結局着せ替え人形のような扱いが終わりを告げたのは、五度目の衣装を着終わったときで、少年はその頃にはもうすっかり疲弊していた。こんな高そうな服を着ていて、居心地が良いわけがない。分不相応ここに極まれり、だ。そんな内心を察することもない、よくお似合いですよ、という社交辞令を聞き流していると、ノックの音がして例の男が入ってきた。
「お帰りなさいませ、お客様。ちょうどお連れ様のお召し物が決まったところでございます」
「ああ、ありがとう。……とても似合っているよ、キョウヤ」
柔く微笑んできた男だったが、少年はその格好に少しだけ驚いてしまった。
それこそ、時々街で見かけることがある、とても高貴な方と同じような服装だ。勿論、多分今の自分もそういう格好をしているのだろうが、先ほど自分を鏡で見たときとは全然違う。鏡に映った自分はどこからどう見ても服に着られているようにしか見えなかったが、この人は違う。これだけの衣装を、見事に着こなしてしまっているのだ。そして驚いたことに、普段の傭兵の格好よりも、この服装の方がずっと似合っている。容姿があやふやだというのにそう感じさせるのは、やはり男が醸し出している雰囲気が原因なのだろうか。
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