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第1章 かなしい蝶と煌炎の獅子 〜不幸体質少年が史上最高の王に守られる話〜
デート?9
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陽が落ち始めたというのに、男が少年を放す様子はなかった。確かに自分だけでは行けないような場所で、素敵なものを沢山見せて貰えはしたが、それでも少年にとって、他人と一緒にいることはとても気疲れしてしまうものなのだ。
またもや高そうな店で夕食を済ませた後、男に連れられて乗り込んだ馬車の中で、少年は少し居心地が悪そうに窓の外や足元へと視線を彷徨わせてから、そろりと男の顔を窺う。
「あの、まだ何処かへ行くんですか?」
「うん? ああ。今夜な、少しだけ特別な催し物があるのだ。あのような事件があった後ゆえ、開催されるかどうか心配だったが、さすがはギルヴィス王陛下。強行してきたな」
「催し物、ですか? ……聞いたことがありませんが」
ほんの少し訝しげに尋ねた少年に、男は頷いた。
「それはそうだろう。基本的に国内の貴族向けの催しだ。一般市民では、聞いたことのある者の方が少ないのではないか?」
「貴族向け……。それなら、僕は参加できませんね。ここら辺で失礼した方が良いでしょうか」
「何故だ? 折角なのだから、付き合ってくれ。今日はお前の一日を私にくれる約束だっただろう?」
そうであってくれという願いを込めて言った言葉であったが、やはりその期待はあっさりと裏切られてしまった。まあ、ここで馬車から追い出されても困ってしまうと言えば困ってしまうのだが。
「……そうですね。お約束ですので」
そう言って返せば、男は満足したように微笑んだ。
「幻燈籠流し、と言ってな。ギルガルド謹製の魔術燈籠を空に浮かべ、それを愛でながら酒を酌み交わす祭なのだ。私は一度しか見たことがないが、魔術燈籠が映し出す幻影たちはそれはそれは美しく見事なものだぞ。お前もきっと気に入るだろう」
貴族向けの催しに参加したことがあるということは、やはりこの男は貴族お抱えの兵士か何かなのだろう。しかし、いくら貴族お抱えだからといって、兵士が単独で参加できるというのもおかしな話だ。もしかするとこの男、自分が想像しているよりもずっと上流階級に位置する貴族に仕えているのかもしれない。
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