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第1章 かなしい蝶と煌炎の獅子 〜不幸体質少年が史上最高の王に守られる話〜
潜入10
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この国生みの伝承に関しては、信じている者もいれば信じていない者もいるのだが、他の大陸に比べ、リアンジュナイルの民に魔法適性のある者が多いのは事実だ。
一方の魔導は、魔法とは全く別機構の術式である。それはいわば、召喚術と魔術を組み合わせて魔法に並ぶ術式にまで昇華させたもの。己には足りぬ魔法的な部分を、ヒトならざるものによって補う術。それも召喚の術式は、限りなく召喚者、すなわち魔導の使用者に有利な条件での召喚がなされる。しかし、それはつまり、召喚される側にとっては不利益でしかない。精霊と対等な関係で行使される魔法とは違い、召喚対象を強制的に使役する魔導は、非常にリスクの高い術式であるとも言える。これは、魔法適性のある人間が少ない他大陸において、それを補うために、リスクを知った上で生み出されたものなのだ。故に、精霊のようなヒトならざるものを尊重するリアンジュナイル大陸の民の多くから魔導は忌み嫌われており、魔導を使用する者のほとんどは、リアンジュナイル外の大陸の人間なのである。
ということは、だ。
(裏カジノの経営側は、別大陸の人間……? ならばここは大当たりか)
思案の片手間に壁を眺めれば、確かに判りにくいが、カードを通す箇所がある。僅かな躊躇いすらなくそこにカードを差し込めば、壁に光の紋様が浮かび上がり、次の瞬間、中央に亀裂が走って扉が開くように左右にスライドした。
(なるほど。これは巧妙だ)
恐らくは、これも魔導。ならば魔導の心得がないこの大陸の人間には、そう簡単には見抜かれないだろう。
開いた扉を潜って中へと進むと、僅かな明かりを灯すランプにぼんやりと照らされる空間に、下へと続く階段があるのが見えた。やはり逡巡することなく、男はゆっくりと階段を下りる。壁にかかる橙色の光を宿したランプには、この大陸ではあまり目にすることのない装飾が施されていた。
階下へ進むと、そこには両開きの大きな扉があった。そして、その扉を守るように、屈強と称して良いだろう護衛兵のような者が二人立っている。尤も、恐らくそれなりの手練れであろう護衛兵よりも、のんびりと階段を下りてきた男の方が優れた体格ではあったが。
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