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第1章 かなしい蝶と煌炎の獅子 〜不幸体質少年が史上最高の王に守られる話〜
潜入20
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ディーラーとの大勝負を終えた男は、やることはやったとばかりにひっそりとこの場を去ることにした。幸い、観衆だった人々は男の残した金貨の山分けで忙しい。勿論声を掛けてくる者もいたが、皆二言三言話しただけで、すぐに金貨の山へと向かって行った。男の方もこれ以上ここに留まる気はなかったので、声を掛けてくる者には簡単な言葉を返しつつ、入口である大きな扉へと向かって行く。
と、こちらに向かって真っ直ぐに歩いてくる人影に気づき、男は立ち止まった。
「私に何か?」
致し方なかったこととは言え、男は少々目立ちすぎてしまった。自分に掛けられている魔法の都合上、できる限り長居はしたくはないのだが。
そんなことを思いつつ、歩み寄ってきた男性に向き直る。見た目から判断される相手の歳は、男よりも少し若いくらい、恐らくは二十五歳前後だろうか。黒く艶やかな髪と、同じく漆黒の瞳が印象的な青年だった。体格は男に劣るが、細すぎるということはなく、筋肉がしっかりとついている。それも、恐らくはそれ相応に鍛え上げてある。そこまでを男が見て取ったところで、青年は優雅に一礼をした。
「初めまして。私、このカジノのオーナーをしております、デイガー・エインツ・リーヒェンと申します」
「ほう、貴方のようなお若い方がオーナーでしたか。わざわざご挨拶頂き有難い。私はロストと言います。本日は素晴らしい体験をさせて貰った。今日はこれで帰ろうと思っているのだが、またこちらに伺ってもよろしいだろうか?」
引き止められるのはあまり望ましい事態ではないと、先んじて今日はもう帰宅するのだと伝えた男だったが、どうやら相手はそこまで引き止める気もないようだった。
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