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第1章 かなしい蝶と煌炎の獅子 〜不幸体質少年が史上最高の王に守られる話〜
煌炎42
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「おや、もうこんなところまで来てしまったのか。いや、楽しい時間はあっという間だなぁ」
「それは、良かったですね」
一体何が楽しいのだかまるで判らないが、取り敢えず話は合わせておく。
「おお、そうだ。ところでキョウヤは恋人はいるのか?」
「…………はい?」
ところで過ぎる話に、少年の思考は一瞬停止してしまった。
「恋人はいるのか?」
ご丁寧に繰り返してくれた言葉を耳に入れ、たっぷりと噛み砕き、男を見る。
「……あの、急に、どうされたんですか?」
「いや、恋人がいないのなら……うん? いや、いてもいなくても変わらんか。変わらんな。ふむ、では今のは忘れてくれ」
勝手に納得して頷いた男に、そうですか、とだけ返しておく。忘れて良いというなら忘れてしまおう。きれいさっぱりと。
「恋人の有無は本質的ではないな。それではキョウヤ」
「はい」
「私と付き合ってはくれないだろうか?」
今度こそ、少年は作り笑いを浮かべたまま固まってしまった。
声音は、真剣そのもののように聞こえる。言われた台詞は、多分恐らくきっと、少年が思った通りの意味なのだろう。
「…………どうやら、貴方も相当お疲れのようですね。もう家はすぐそこですので、見送りはここまでで結構です。ありがとうございました。貴方もゆっくり休んでください」
言うや否や、少年は男の次の発言を許さない勢いで、男に背を向け足早に歩き出した。後ろから名を呼ぶ声が聞こえた気もしたが、多分気のせいだ。気のせいに決まっている。
幸いなことに男がそれ以上後を追って来る様子はなく、こうして少年は、ようやく安息の時を得たのであった。
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