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第1章 かなしい蝶と煌炎の獅子 〜不幸体質少年が史上最高の王に守られる話〜
デート?3
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「悪いが、私とこの子はれっきとした客だ」
そう言って男が懐から出した紙を警備員たちに見せると、途端に警備員の顔色が青ざめる。
「た、大変失礼致しました。ロンター公縁のお方でしたか」
言葉と共に深々と下げられた頭に、少年は何が起こったのか全く理解ができなかった。
(ロンター公って誰だろう)
まあどこかの貴族か何かなのだろう。そして、この男はその貴族の知り合いか何かなのだろう。なるほど、それならまあ。滲み出る気品のようなものの理由にもなるし、納得がいく。貴族の知り合いがどうして傭兵をしているのかまでは判らないけれど。
困惑するも、男に促されて商品に目をやれば、美しい細工にため息が出てしまう。ゆっくり見れば良い、という男の言葉に甘えてひとつひとつを丁寧に見ていると、店員らしき女性から触っても構わないと言われ、びっくりして少し肩が跳ねてしまった。勿論、こんなに綺麗で高価な物に触れるなんて恐れ多いと固辞したが。
男は男で、こういう類の物はすぐ壊してしまうからと遠慮をしていたのだが、品物に夢中の少年の耳には入っていないようだった。
その後も商店街内の色々な店を見て回ったが、追い出されかけたのは最初の一軒のときだけだった。恐らく、ロンター公とやらの関係者が来ているという話が伝わったのだろう。どこに入ってもやたらと歓迎されてしまって、少年にとっては、それはそれで肩身が狭い思いだった。しかし並ぶ商品たちは、その肩身の狭さを忘れさせてしまうほどに美しく、結局二人はすべての店に足を運んでしまい、最後の店を出るころにはすっかり昼を回ってしまっていた。
それに気づいた途端、少年のお腹が控え目に鳴る。その小さな音が聞こえてしまったらしく、少し笑った男から遅めの昼食にしようかという提案を受け、頷いた。どこへ行くのかは知らないが、お腹が減っているのは事実だ。でも、できれば人があまり多くない場所がいいな、と思いつつ男に連れて来られたのは、これまた高級料亭だった。確かに人は多くない。しかし、これはこれでとても居心地が悪い。
最早値段を見るのも恐れ多くて、結局食事の間中視線を落としっぱなしだった少年だが、それでも男が頼んでくれた料理はどれも美味しかった。正直、緊張しすぎてあまり味を覚えていないが。
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