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第1章 かなしい蝶と煌炎の獅子 〜不幸体質少年が史上最高の王に守られる話〜
デート?8
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「あの、ですから、こんなに色々と頂いてしまう訳にはいかないです。そもそも、僕は先日頂いた染料のお礼にご一緒している訳ですし、だというのに更に何かを貰うというのはおかしいのではないかと」
「私がそれで喜ぶのだ。この上ない礼ではないか」
「……はあ」
絶対に間違っている気がするが、多分これは問答をしたところで暖簾に腕押しなパターンだ。そう判断し、少年はそれ以上このことについて余計なことは言うまいと決めた。なんだか貢がせているような罪悪感は燻るが、それを言ったところで、私が喜ぶから、のひとことで済まされてしまうだろう。
内心でため息をついた少年であったが、一方の男は相変わらずにこにこした表情で、折角だからその眼帯もつけてくれとせがんで来る。外で眼帯を外すのは着替え以上に嫌だったが、半ば無理矢理とはいえ買って貰った義理があるし、一応ここは個室で、眼帯を外している間に自分を見る者もいない。結局、少年は渋々ながら頷いてしまった。
嬉々とした表情で店員を連れて部屋の外へ出て行った男の背中が扉の向こうへ消えたのを確認してから、改めて渡された眼帯を見る。艶消しがされている、とても上質な革だ。刺繍に使われている糸もきっと高価なものなのだろう。裏面は裏面で、今まで触ったことのない優しい手触りと極上の柔らかさを持つ布があてられていた。
自分の右目を覆うボロ切れのような眼帯をそっと取って、すぐに蝶の眼帯を当ててみる。ああ、思った通り。瞼に触れる布の感触は優しく、それでいてしっかりと目を包み、安心感を与えてくれる。今まで少年が使っていた物では決して得られない感覚だ。高価な品というのは、これほどまでに良い物なのか。
ベルトの部分だって、今までの安布でできたものと違ってしっかりしており、硬めの金具も相まってか、何かあったときに外れてしまうかもしれないという不安をほとんど感じないで済むほどだった。
刺繍を指で辿りながら、安堵しきった息を吐くと、扉を叩く音がした。聞こえた声掛けに、男が入室の許可を取っているのだと悟る。
「どうぞ」
応えた声が普段よりも少しだけ柔らかくなったのは、今までにない安心感をもたらしてくれた男に対する感謝だったのかもしれない。きっと、少年にその自覚はなかったけれど。
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