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第1章 かなしい蝶と煌炎の獅子 〜不幸体質少年が史上最高の王に守られる話〜
デート?14
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「大変有難いことに、バーを通じて様々なお客様と仲良くさせて頂いておりますので。今回はたまたま、この幻燈籠流しに例年参加されている貴族の方からのご紹介ということで、参加させて頂くことができたのです。いや、初めて参加致しましたが、思っていた以上に素晴らしい催しですね。さすがは錬金術大国ギルガルドです。私などでは到底手が届かないお品だと判っていても、是非譲って頂きたいと思ってしまう」
「ははは、デイガー殿ほどのお方が何を仰る。貴殿ならば、手が届かないということはありますまい」
にこやかに言葉を交わしているが、男は少年を背で隠すようにしたままで、それをやめる様子はない。ほんの少しだけそれを不思議に思った少年だったが、話を聞く限りデイガーと呼ばれる人物は高貴な人のようだったし、そんな相手にみすぼらしい自分を見られるのは嫌なのだろう、と納得してしまった。結局この男の地位も高そうな様子だったし、薄汚い自分を知り合いだとは思われたくないという気持ちはとても良く判る。自分がどうしようもなく汚くて価値がない存在であることくらい、少年自身が一番良く知っているのだ。
気づけば、先程まで抱いていた高揚感は今や見る影もなく、少年はとても沈んだ気持ちになった。と言っても、己の価値については嘘偽りなく常日頃から認識していたので、今のこれは、折角良い気分で美しいものを眺めていたのに一気に現実に引き戻されてしまったことに対する憂いだろう。
「しかし、驚いたと言えば、貴方がここにいらっしゃることこそ驚きです。幻燈籠流しと言えば、ギルガルド国内の貴族でも参加できる者は僅からしいではないですか。そんな祭に他国の人間であるロストさんがご参加されているとなると、やはり貴方の正体が気になるところですね」
にこりと親しげな笑みを浮かべたデイガーに、男も微笑みを返す。
「私は本当に大した人間ではありませんよ。今の雇い主がたまたまそれなりの地位にいらっしゃる方だというだけです」
「それなりの地位、くらいでは、傭兵である貴方がこの場に立つことは難しいのではないでしょうか? ああいえ、貴方を貶める意図はないのです。ご気分を悪くさせてしまったら申し訳ない」
「いやいや、仰りたいことは判りますとも。しかしながら、これ以上雇い主についての情報を喋るわけにはいきませんので、このあたりでご勘弁願いたい」
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