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第1章 かなしい蝶と煌炎の獅子 〜不幸体質少年が史上最高の王に守られる話〜
デート?18
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王宮庭園から馬車に揺られて自宅へと帰りついたのは、日付が変わる少し前であった。結局ほとんど丸一日を奇妙な赤い男と過ごしてしまった少年だったが、今日見たものはどれも美しいものばかりで、正直に言うと割と楽しかったし、そう思っている自分に少しだけ驚いた。勿論、隣にいたのがこの男でなければもっと楽しかったのだろうが。
しかし、珍しく少しだけ気分が高揚している少年とは対極に、帰りの馬車に乗っている間の男は静かだった。行きの馬車の中ではやたらとあれこれ話しかけて来たというのに、帰りはひとことも発さず何かを考えこんでいるようで、それになんとなくの疑問は抱いたものの、やはりそこまで興味もないので、少年はあまり気にしていなかった。
自宅の前で男と共に馬車を見送り、何も言わないまま別れるのもなんだか変なので、形式的に今日の礼と就寝の挨拶を済ませて家に入ろうとしたところで、男に腕を掴まれた。
「あの?」
「……キョウヤ」
「はい」
どうでも良いから言いたいことがあるなら早く言って離してくれないかな、などと考えながら男の顔を見た少年は、ほんの少しだけ驚いてしまった。
あの、いつもにこにこと愛想の良い笑みを振りまいている男の顔が、何故か困ったような表情を浮かべていたのだ。
「キョウヤ……」
「はい、なんでしょうか」
返せば、ほんの少しだけ黙った男は、少年の手を離してから、いきなり深々と頭を下げた。
「すまない。お前には大変申し訳ないことをした」
「……はい?」
少年には一体何に対する謝罪なのかが全く判らなかったが、男の方は顔を上げることなく言葉を続ける。
「元を正せば私が撒いた種だ。いや、寧ろそれを目的としていた。しかし、こんなことにお前を巻き込んでしまったこと、本当に申し訳ないと思っている。今更方針を変える訳にもいかぬ故、どうしてもお前を煩わせてしまうが、どうか許して欲しい。その代わりに、という言い訳にならないことは承知しているが、巻き込んでしまった以上、私の全力を以てお前を守ると誓おう」
「…………はあ」
何を言っているんだこいつは。
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