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第1章 かなしい蝶と煌炎の獅子 〜不幸体質少年が史上最高の王に守られる話〜
デート?19
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多分、この人はやはり頭がおかしいのだろう。そう結論付けた少年は、さっさと家に入ってしまうことにした。これ以上この男に付き合っていると、こちらまで頭がおかしくなりそうだ。
「あの、良く判りませんが僕は平気なので、ゆっくり休んでください。僕ももう寝ますので」
「おお、許して貰えるのか! やはりキョウヤは優しい子だな」
顔を上げた男に微笑みを投げられたので、少年も適当に微笑みを返しておいた。どうでも良いので早く寝たい。
「では、これ以上お前を引き留めるのは悪いので私も帰るとするが、その前にひとつ」
「……なんでしょうか」
まだ何かあるのか、と思った少年の前に、男が赤い石の嵌まった簡素な指輪を差し出した。
「これを受け取ってくれ。そして、肌身離さず持っておいて貰いたい」
差し出された指輪を改めて見る。一見すると簡素なそれは、よく見ればリングの内径に複雑な紋様が描かれており、装飾として嵌まっている石は、その内で炎が揺れるような不思議な輝きをしていた。と同時に、これと似ている、しかしもっとずっと美しい炎をどこかで見たような錯覚に陥る。あれはどこでのことだったのだろうか。もしかすると、夢の中での出来事だったのかもしれないけれど。
「受け取って貰えるな?」
「え、あ、」
ぼんやりと記憶を辿っているうちに手を取られて、少年はびくりと震えた。しかし、そんな彼に構うことなく、男は触れたその手に指輪を握らせ、満足そうに頷いてから手を離した。
「あ、あの、」
「良いから受け取ってくれ。まあ、お守りのようなものだ。きっと役に立つだろう」
「は、はあ」
何がなんだか判らないといった風の少年を押し切るように、とにかく常に身に着けているように、と一方的に念押しをしてから、男は背を向けてさっさと帰路についてしまった。
混乱していたせいかそれを引き留めることもできなかった少年は、握られている指輪に目を落として、瞬きを数回。
「……はぁ」
今日一番かもしれない盛大な溜息を吐き出してから、のろのろと自宅へと帰っていくのであった。
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