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第1章 かなしい蝶と煌炎の獅子 〜不幸体質少年が史上最高の王に守られる話〜
デート?20
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帰路についたと思われた男であったが、歩きながら時折上空を気にするように見やっては、また前に向き直る、という行動を繰り返しており、一向に宿へ帰る様子がない。一体何をしているのかだが、単純な話で、上空に待機しているであろう伝達役になんとか伝言を伝えたいと考えているのだ。
男が思っていた以上にとんとん拍子に話が運んだお陰で、今後のことについて、急ぎ本国と連絡を取る必要が出たのである。といっても、上空にいるのは例の火炎鳥ではない。二日前に本国へ送ったあの鳥の翼では、ここに戻って来るまでにはまだ時間を要するし、仮に火炎鳥が今手元にいたところで、今回の言伝は可能な限り速く届ける必要があるものであるため、使われることはなかっただろう。兎に角、風霊の言伝以上の速度が出せるものに伝達を任せなければならないのだ。それこそ、本国最速の獣を用意してでも。
尤も、それに関しては既に算段を整えてある。そろそろこの国へ到着して、上空で待機している頃だろう。だからこそ、先程から男は上を気にしているのだ。ならばさっさと言伝を済ませてしまえば良い話ではあるが、今回とった手段はいつにも増して人目に触れてはならないものであるが故に、細心の注意を払わならけばならない。しかし、
(……ふむ。やはりつけられているな)
感知能力の類はからっきしな男であったが、多くの戦場を駆け抜けてきた経験からか、自分を凝視する視線くらいは察知できる。確認のために風霊に視線を投げれば、風の衣を纏った人型は小さく頷いてみせた。大方デイガーの差し金だろう。だが、確かに向けられる視線があるというのに、まるで気配を感じない。
このことから考えられる可能性は二つである。一つ目は、魔法か魔術か魔導による遠隔監視。二つ目が、姿を完全に隠した、ヒト以外の何かによる監視。
男ではそのどちらなのかを判断することはできないが、恐らくはどちらかである。となると、視線から逃げようと走り回るだけの鬼ごっこが有効な手段とは思えなかった。だが、だからと言ってこのまま伝達役と接触する訳にもいかない。
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