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第1章 かなしい蝶と煌炎の獅子 〜不幸体質少年が史上最高の王に守られる話〜
デート?22
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つまり、男の考えはこうだ。元々伝達は、相手に会わず、風霊に声を運ばせてやるつもりだったため、別に見られていること自体は構わない。問題なのは、耳の方だ。風霊が運んだ声を監視役が聞けない保証がどこにもなかった。故に、いっそのこと今回の伝達役すら聴き取るのが難しいような状況に置いてしまえば安泰だろう、と。そういう発想に至った訳である。
正直、上空に待機している伝達役がこの条件下で音を聴き取れるかどうか、不安が残るところだったのだが、どうやら作戦はうまくいったらしい。上空にあった気配が消えたということは、無事に伝言を受け取って本国へ向かったということだろう。だが、
(適応対象は自分のみのつもりだったんだがなぁ)
自分が発する音だけを止めたつもりだったのに、勢い余って周囲の音を丸ごと止めてしまったのは、不器用さのなせる業だろう。そのせいで大分余計に魔力を消耗したというのに、その割に思っていた以上に効果時間は短かった。今回はきちんと正式な詠唱までしたというのに、これである。
つまり、やはり男はこういった類の魔法はすこぶる苦手なのだ。詠唱した上でこの様では、とてもではないが使いものにならない。その事実を改めて実感し、彼はなんとも言えない気持ちで宿へと戻るのだった。勿論、未だ消えない視線を連れて。
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