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第1章 かなしい蝶と煌炎の獅子 〜不幸体質少年が史上最高の王に守られる話〜
狙われた店主4
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「おー、起きてるなぁ。いいぞ坊や、偉い偉い」
まったくそうは思っていない声音で男は笑っている。なんとなく、次に続く言葉は察しがついた。
「偉いついでに、素直にお口が利けるだろう?」
ほら、案の定。
ここに連れて来られてからずっと少年が要求されているのは、ただひとつ。頻繁に店に訪れていた、あの胡散臭い男についてのことだった。
しかし、話せと言われても困ってしまう。少年があの男について知っていることなど、名前と、得体が知れないということと、頭が少しイかれているらしいということくらいだ。そもそも顔すら判然としないような男だから、ロストという名も本当かどうか怪しい。
とにかくこんな有様なので、いくら問い詰められたところで、よく知らないとしか答えようがない。
ところがどうしてか、少年を連れ去った連中は、少年と男がそれなりに深い仲であると勘違いをしているようなのだ。いや、確かに睦言のようなことを言われはしたが、少年がそれに応えた覚えはないし、断じて深い仲などではない。寧ろ、客でもない彼との仲は、足湯のように浅いと思っている。そんなこんなで、隠し立てをするなと暴力を振るわれたところで、本当に何も答えることができないのだ。
よって少年は、困った顔を作って、もう何度も返した言葉をまた繰り返すことになる。
「そう言われても、あの人のことはよく知らないんです」
表情を作らずとも実際かなり困っているのだが、気を遣わないと内心の飽きが表に出てしまいそうだったのだ。それくらいには、もうずっと同じ台詞ばかりを吐いていた。
対する男も同じようなもので、代り映えのしない返答に笑みを深める。その表情に、少年は反射的に身構え、歯をしっかりと食い締めた。
次の瞬間、鈍い音とともに左の頬を打った強い衝撃に、少年は飛ばされるようにして床に倒れ込んだ。
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