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第1章 かなしい蝶と煌炎の獅子 〜不幸体質少年が史上最高の王に守られる話〜
狙われた店主7
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一方のデイガーは、打って変わって怯え切った目をしている彼に満足したのか、柔い笑みを深めた。
「うん。自分の置かれた立場というものがようやくきちんと理解できたようだね。いいこいいこ」
ナイフから離れた手に頭を撫でられ、少年の青褪めた顔はより一層色を失い、寒さから来るものではない震えがその身体を支配した。
「さて、落ち着いたところで、もう一度訊こうか。あの男は何者で、その目的な何なのか。教えてくれないかな?」
歯の根も噛み合わない様子の少年に、デイガーがにこやかに問い掛けた。それはやはりこれまでと同じ内容であったが、頭の中が痛みと混乱でいっぱいになっている少年が、今まで以上の答えを返せるはずもない。いや、そもそも相手が望む答えなど端から持っていないのだ。冷静であろうとなかろうと、答えられないことに変わりはなかった。
最早否定の言葉すらも返せない少年に、デイガーは困ったように眉尻を下げて溜息をついた。
「うーん、そんなに難しいことを言ってるかな? ただ少しあの男について知りたいだけなんだけれど」
そう言いながら伸びた手が、少年の腿に刺さるナイフに伸びる。そして彼は、握ったそれをぐりぐりと左右に揺らし始めた。傷口を押し拡げるように肉と神経が掻き混ぜられる痛みに、悲鳴を上げた少年の身体がびくびくと痙攣する。
「ほらほら。素直に教えてくれないから、こうして痛い思いをするんだよ。まったく、こんなことをされてまで隠しておきたいくらい彼が大切なのかい?」
脂汗の滲む頬を軽い力で叩かれ、少年はのろのろと首を横に振った。大切だから隠してるんじゃない。何も知らないだけなのに。
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