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第1章 かなしい蝶と煌炎の獅子 〜不幸体質少年が史上最高の王に守られる話〜
狙われた店店10
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「これは……!」
どうやら少年にとってのタブーであるらしい眼帯を乱暴に奪い取ったデイガーは、露わになった瞳に思わず息を飲んだ。
左目とは全く異なる、ヒトならざる目。その目を、デイガーは知っていた。
黒地に輝く金の虹彩。そして、金色の中に浮かぶ、不思議な紋章。内側から光を放っているかのように揺らめいているそれは、まるで蝶のような形をしていた。
「――エインストラ」
それは、伝承の中にのみ残る存在。かつて多くの人々が求め、しかし出逢うことすら叶わなかった、太陽と月の申し子。
世界の隔たりを越えるもの《エインストラ》。この世で唯一、己が意思でありとあらゆる次元を越えることができる生き物。全世界を統括する神々が全ての次元を把握するための目となる、神の僕。
それはまさしく伝説上の生き物だ。いや、エインストラは確かに存在しているのだが、誰もそれをエインストラとして認識したことがないが故に、伝説と謳われていると言った方が正しい。彼らは、飛んだ先の次元に適応する。己のカタチを、その次元で動くのに適した姿へと変えることができるのだ。たとえばそれは人の姿をしているかもしれないし、鳥の姿しているかもしれないし、もしかすると草木の姿をしているのかもしれない。
太古の文献に記載されているエインストラの手がかりは、黒地に金の虹彩をした瞳を持ち、その瞳の中に蝶が翅を広げたような紋章があるということだけだった。だが、それも恒常的なものではないと言う。彼らの瞳がそうなるのは、彼らが次元を越えるときのみであると、確かにそう書いてあった。尤も、所詮は古い文献の話だ。その記載に間違いがないと言い切れるはずもない。
何故なら、次元を越えるどころか魔法を発動する様子すら見せない少年の右目は、まさしく世界の隔たりを越えようとするエインストラのものだったのだから。
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