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第1章 かなしい蝶と煌炎の獅子 〜不幸体質少年が史上最高の王に守られる話〜
狙われた店主11
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いかにエインストラと言えども、次元を越えるにはそれ相応の魔力かそれに相当する何かを消耗する筈である。しかしそういった特殊な力の流れを一切感じないということは、つまり、この少年にとってこの瞳の紋章は恒常的に発現しているものなのだろう。
「ああ、それにしても……まさかこんなところで、ずっと求めていたものに逢えるだなんて……」
恍惚とした様子すら感じさせる声でそう呟き、デイガーはよりよくその瞳の証を見ようと手を伸ばした。が、その動きが不意に止まる。
あれほどまでに悲痛だった少年の叫びが、いつの間にか止んでいたのだ。
そのことに正体の判らない違和を感じ取ったデイガーが、金の瞳だけを見つめていた視野を広げる。そうして改めて少年の顔を見た彼は、僅かに目を見開いた。
デイガーを見つめる少年の目には先ほどまでのような怯えは欠片もなく、それどころか、平坦なまでに冷めた表情をしている。そして少年は、デイガーと視線が絡むと口の端を吊り上げて見せた。
「酷いコトをするじゃあないですか」
口元に嘲りを乗せた彼から発された人を馬鹿にするような声は、確かに少年の喉から発されたものだった。勿論、紡がれた音も先ほどまでの少年のものと同じだ。だが、何かが決定的に違う。
「……貴方は、どなたでしょう」
デイガーが先ほどまでとは違う丁重な言葉で語りかけたのも、無理はない。それほどまでに、『彼』は先ほどまでの少年とは違っていた。確かに姿や声こそ同じだ。しかし、その質がまるで違う。『彼』が纏う雰囲気は冴え冴えとしており、触れれば切れそうな刃のようだった。
そう、まるで、かちりとスイッチを切り替えたかのように。全く別の存在になったかのように。
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