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第1章 かなしい蝶と煌炎の獅子 〜不幸体質少年が史上最高の王に守られる話〜
狙われた店主16
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この少年は何かを企んでいる。企みの内容は定かでないが、やたらと話を引き延ばそうとしているのはそのためだろう。ならば『彼』の言葉に惑わされず、さっさと逃げられない身体にしてしまうべきだ。
己の考えに従い、デイガーが斧を振り上げる。これでは血液が無駄になってしまうが、それも仕方がないこと。桶やら瓶やらの到着を待つよりも早く仕留めてしまえと、デイガーの直感がそう告げているのだから。なに、飛び散った血液など、後で可能な限り集めれば良いだけだ。
「大丈夫、きちんと止血は致します。ですのでご安心くださいね!」
言いながら、鎖に繋がれている右脚に向かってデイガーが斧を振り下ろす。襲い掛かる凶刃に、『彼』は何を思ったのだろうか。少年の纏う雰囲気が急速に変化する奇妙な感覚を肌で感じ取ったような気がしたが、だからと言って迷うデイガーではない。
重力と腕力に任せた勢いをそのままに、狙った場所に正しく打ち下ろされた刃が、少年の肌を切り裂こうとした、その瞬間。
ガラスの割れるような音が辺りに響き、少年の背後の空間に亀裂が走った。
「っ!?」
反射的に斧から手を離したデイガーが後方へと飛び退るのとほぼ同時に、亀裂から凄まじい勢いの炎が噴き上がり、つい先程までデイガーが居た場所を飲み込んだ。そのまま、少年を中心にするように、炎が巨大な渦を作り上げる。置いてきた斧がどうなったかと見やれば、持ち手はおろか、鉄製の刃までもが炎に焼かれ、どろりと溶け出しているのが判った。
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