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第1章 かなしい蝶と煌炎の獅子 〜不幸体質少年が史上最高の王に守られる話〜
狙われた店主17
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(馬鹿な! 私の空間魔導が破られただと……!?)
空間操作魔導によって生み出された空間を術者以外が破壊することなど、そうそうできることではない。だが、可能性として有り得ることは知っていた。最も考えやすいのは、自分よりも上位の空間系の魔導か魔法の使い手による破壊。しかし、この場を焼く炎は、もう一つの可能性を示していた。すなわち、
(空間をも捻じ曲げる圧倒的な破壊力で突破してきたか!)
想定外の事態に構えるデイガーに、燃え盛る炎を切って風の刃が飛んできた。だが、デイガーが何かをする前に、彼の影から黒い何かが跳び出し、その風を払ってしまう。しかし、払われて散った風はそれでもそのまま突き進み、デイガーの握っていた眼帯に絡みついた。そして、咄嗟のことに反応しきれなかったデイガーの手から、眼帯を奪い去ってしまう。
思わず風の行く先を目で追えば、それは目の前に広がる炎の渦へと向かっていった。まるでそれを迎え入れるように、炎がぶわりと広がって二つに割れる。
その先の光景に、デイガーは目を見開いた。
少年を左腕に抱いた、長身の男。長い年月をかけて鍛え抜かれたのだろう立派な体躯のこの男を、デイガーは知っていた。
「……なぜ、」
男の伸ばした右手に眼帯が運ばれていくのを呆然と見ていたデイガーだったが、その顔がみるみる内に憎しみへと染まっていく。
「き、さま、」
男が纏っているのは傭兵の服だ。それ以外にその身を鎧うものはない。それでも、間違えるはずがなかった。
腰にまで届く赤銅の癖毛。炎を溶かし込んだような金色の瞳。何よりも、炎を背負い、従える、絶対的な威厳。
そうだ、忘れなどしない。忘れられる訳がない。この男こそ、五年前の大陸間戦争でロイツェンシュテッド帝国に辛酸を舐めさせた男。万の軍を率い、その先陣に立って誰よりも同胞を屠った災厄。憎むべき、帝国軍の仇敵。
ぎりりと奥歯を強く噛んだデイガーは、その憎悪の全てを以て男を睨み上げた。
「貴様だったのか!! グランデル国王、ロステアール・クレウ・グランダ!!」
吠え立てる声に、リアンジュナイル始まりの四大国がひとつ、赤のグランデル王国国王は、金色の瞳を向け、うっすらと笑ったのだった。
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