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第1章 かなしい蝶と煌炎の獅子 〜不幸体質少年が史上最高の王に守られる話〜
市街戦1
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「遅くなってすまない、キョウヤ」
傷だらけの手足を拘束する枷を剣で断ち切ってやってから、少年を見て、王は痛ましげに顔を歪めた。
何度も殴られた頬は腫れ、口元には吐しゃ物がこびりついている。極めつけは、腿に突き刺さったナイフだ。少年がここに来てから王が助けに来るまでの間に何があったかなど、察するに余りある。
全て、判った上でのことだ。こうなることを予測した上で、王は少年を囮にするという選択肢を取った。何故なら、目的を果たす上でそれ以上に有効な手段がなったから。
「すまない、辛かっただろう」
汚れた顔を拭ってやりながら、王が再び謝罪の言葉を口にする。しかし少年がそれに反応を返すことはなかった。ただひたすらに王の瞳を見つめて、とろりとろりと、溶け出しそうな表情を浮かべている。
「……きれい」
初めて少年にそう言われたあのときと同じ、蕩け切った声で紡がれた言葉に、王はこの上なく幸せそうな微笑みを浮かべた。
「ああ、私もお前を愛しているよ」
囁いて、少年の唇に己のそれを重ねようとする。しかし、その唇が触れ合う前に、黒い影が王に向かって奔った。視界の端にそれを捉えた王が、少年を抱えたまま横跳びに避ける。そして、影が飛んで来た方、デイガーを見やって、僅かに眉根を寄せて見せた。
「無粋だとは思わんか、帝国の魔導師よ」
「黙れ。そしてそれを返せ。それは我が帝国のものだ」
「キョウヤを物扱いする輩にくれてやる訳にはいかんな。……それよりも、この国に何用だ。青の国の使者を操って赤の国から王冠を盗み、それを金の国で売り捌こうなど。お遊びにしては少々度が過ぎていると思うが?」
王の言葉に、デイガーが歪んだ笑みを浮かべた。
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