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第1章 かなしい蝶と煌炎の獅子 〜不幸体質少年が史上最高の王に守られる話〜
市街戦3
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「すまない、キョウヤ。脚が痛むだろうが勘弁して貰いたい」
未だに蕩けた表情の少年からの反応はなかったが、それを了承と捉え、少年を抱いたまま王は駆けた。狭い通路を抜けて上階のバーへと飛び出せば、見知ったバーテンダーが驚いた顔をしていたのが見えたが、それにかまけている余裕などない。そのまま扉を開けて通りへと出た王は、予想していた光景に表情を硬くする。
いくら夜とはいえ、ここは貿易国として栄えるギルガルドの首都ギルドレッドだ。当然、この時間ではまだ人通りが多い。陽気に酒を飲みながら歩く人もいれば、友人同士の談笑を楽しんでいる者、愛を囁く恋人たちまで見られる。
未だ眠る様子なく賑やかさが溢れる街を楽しそうに行き交っていた人々だったが、その内の何人かがふと、王の抱えている少年の脚に刺さったナイフを見とがめて、悲鳴を上げた。それを合図にするように、王が声を張り上げる。
「グランデル国王の名において、首都ギルドレッド全域に緊急避難命令を発する! 皆早急にこの場を離れよ! ここはこれより戦場となる!」
びりびりと空気を震わせた声に静寂が訪れたのは、一瞬だった。次の瞬間、通りの至る所で悲鳴が上がり、人々は一斉に散り始めた。
この緊急事態では民の混乱は禁じ得ない。王であれば的確に誘導することもできたかもしれないが、それをするには状況が切迫しすぎていた。錯乱状態の彼らの誘導を含む後始末は、騒ぎを聞きつけてやってくるだろうギルガルド国軍に任せるのが得策だろう。
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