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第1章 かなしい蝶と煌炎の獅子 〜不幸体質少年が史上最高の王に守られる話〜
市街戦4
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「キョウヤ、キョウヤ」
相変わらずぼうっとこちらを見つめて来る少年の頬が優しく叩きながら名を呼ぶが、やはり反応が返ってくる様子はなく、王は苦笑した。
「そう愛おし気に見つめられては、さすがの私も照れてしまう。……だからすまんな、正気に戻って貰うぞ」
そう言い、男が少年の右目を眼帯で覆う。ベルトを後頭部に回して金具をしっかりと留めてやってから、もう一度。
「キョウヤ」
ぺちりと頬を叩けば、どろどろに蕩けていた瞳が段々としっかりした光を宿し、王を見て何度か瞬きをした。
「え……あ……?」
「戻ってきたか。私に見惚れるのは構わないのだが、できればこのごたごたを片付けてからにして貰いたいな」
「……あ、あなた……あのときの、きれいな人……? 夢じゃ、なかった……?」
見上げてくる少年に、男が微笑む。
「グランデル国王、ロステアール・クレウ・グランダだ」
「こ、国王、陛下……!?」
「今まで隠していてすまなかった。謝罪ならばいくらでもするし、巻き込んだ詫びに、可能な限りお前の望みも叶えよう。だが、すまないがそれも全て後回しだ。……脚は痛むか?」
言われ、少年がようやく痛みを思い出したように顔を歪めた。色々あって今まで忘れていたのかもしれないが、傷は決して浅くない。
「……情けないことに、私に回復魔法の適性はない。あれは風と水の属性だからな。故にその怪我を治してやることはできないが、……風霊、もし私に力を貸してくれるのならば、どうかこの子の痛みを少しでも和らげてやってはくれないだろうか。頼む」
頭を下げた王に、風霊が動いた。温かな風が少年の腿を撫で、その痛みをそっと拭い去っていく。痛みの全てとまではいかないが、風が撫でる前よりはずっと痛みが少なくなったようで、少年は少しほっとした表情を浮かべた。それを見て、王がまた頭を下げた。
「すまない、恩に着る」
「……あ、あの、……ありがとう、ございます」
「礼を言われるようなことはしていない。巻き込んでしまったのは私の方なのだから」
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