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第1章 かなしい蝶と煌炎の獅子 〜不幸体質少年が史上最高の王に守られる話〜
市街戦5
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柔らかな声でそう言った王はふわりと微笑んだ。その顔に、少年がまた少し惚けたような表情になる。
(やっぱりこの人、きれい……)
そう思った少年は、無意識にそろりと手を伸ばして、王の頬に触れようとした。だが、その指先が王の肌に触れる直前、空から凄まじい咆哮が響き渡った。びくっと震えた少年を抱き寄せ、王が声のへと目をやる。
空を仰いだ先に居たのは、漆黒の鱗に覆われた巨躯。長い尾と大きな翼を持つ、天翔ける存在。空の支配者。
デイガーを背に乗せて夜空に浮かぶそれは、巨大な漆黒の竜だった。
「……これは参ったな。まさかドラゴンを引っ張り出してくるとは」
「ド、ドラゴンって、でも、ドラゴンはこの世界にはいないはずじゃ、」
「ああ、この世界には存在しないとも。……だが、ここではない別の世界には存在するのだ。帝国の連中め、とうとう次元魔導を実用に足る段階まで極めたな」
王が少年を抱く腕に力を籠める。ドラゴンの出現により、辺りはますます恐慌状態に陥った。最早ちょっとした暴動のような事態になってしまっている。
状況を把握しようと周囲に視線を巡らせた王の前で、地面に幾つもの魔導陣が浮かび上がった。通りの至る所に出現したそれに、王が目を見開く。
「まさか!」
叫んだ王の予測通り、怪しげな光を滲ませたそこから、次々に黒い魔物たちが溢れ出してきた。貿易祭で夜の市を襲ったあれと同類の魔物だ。
「っ、まずい! 火霊! 街に危害を加えぬように焼き払え! 金の国の民を守るのだ!」
命を受けた火霊たちが炎を噴き上げて駆ける中、王は少年をしかと抱え直し、腰の剣を引き抜いた。
「あ、あの、降ろしてください。僕、邪魔になってしまいます」
「何を言う。事情は判らんが、何故かお前は奴に狙われているらしい。ならば私の傍にいるのが一番安全だ」
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