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第1章 かなしい蝶と煌炎の獅子 〜不幸体質少年が史上最高の王に守られる話〜
市街戦6
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そう言い、王は少年を抱えたままドラゴンの直下に向かって駆け出した。途中で襲い来る魔物を全て剣のひと振りで斬り伏せながら、王が叫ぶ。
「炎よ 我が前に立ち塞がりし愚かな者に 炎熱の洗礼を与えよ! 紅蓮の火矢《ファイアアロー》!」
詠唱を受け、王の背後に幾十もの炎が生まれ、ドラゴンに向かい真っ直ぐに放たれた。そのまま竜の鱗に突き刺さるかと思われた炎はしかし、竜の全身を覆うように現れた無数の黒い渦に飲み込まれ消失してしまった。
「ここで空間魔導を使ってきたか。厄介だな」
「空間魔導……?」
「ああ、それもとびきり強力なものだ。恐らく、攻撃を全て別の空間に飛ばしたのだろう。今のような中級魔法程度では、奴に傷ひとつ加えられん。奴に攻撃を通すためには、あの空間を破壊し同時にドラゴンに致命傷を与えられる大技を使うしかないが、そんなことをすればこの街まで吹き飛んでしまう。なるほど、よく考えて仕掛けてきているな。敵ながら見事だ」
言いながら、背後に湧いた魔物を振り返りざまに斬って捨てる。この魔物たちもきりがない。恐らくこれもデイガーの空間魔導であるだろうことを考えると、前のときのように魔導陣を焼き払ってどうこうなるものでもないだろう。
貿易祭のときのあれは事前に設置された、いわばトラップのようなものだったが、これは違う。これは、今現在デイガーによって生み出されている魔導陣だ。消したところですぐさま次の魔導陣が設置されるだけである。向こうの魔力切れを待つという手段もあるにはあるが、デイガーの契約相手は強大だ。魔力が切れるまでにはかなりの時間を要するだろう。そして、恐らくその頃にはこの街が壊滅している。
(さて、どうするか)
既に打てる手は全て打ってある。後はそれが動き出すまでこの場を切り抜けるだけなのだが、決して簡単なことではなさそうだった。
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