アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
第1章 かなしい蝶と煌炎の獅子 〜不幸体質少年が史上最高の王に守られる話〜
市街戦7
-
「さあ、ロステアール国王陛下、私と遊びの続きをしようじゃないか! そしてそれをこちらに寄越せ!」
頭上から降ってきた楽し気な声に、王が剣を構える。
「衝撃に備えろ、キョウヤ。来るぞ」
王の言葉に少年が身を固くしたのと同時に、ドラゴンが急降下した。通りに並ぶ家屋を風圧で破壊しながら、その鋭い牙を剥き、王目がけて凄まじい速度で地を滑ってきた。この巨体を避けるのは至難の業と判断した王が、正面からそれを受ける。身を切り裂こうとする牙を見誤ることなく見事に剣で受け止めた王だったが、しかしそれまでだった。
競ることもなく勢いよく押し飛ばされた身体が、宙を舞う。そこに、すぐさま体勢を変えたドラゴンが追い打ちをかけようと口を開いた。並ぶ牙が目前に迫るのを目端に捉えた少年が、固く目を閉じる。
だが、衝撃と痛みが王と少年を襲うことはなかった。代わりに感じたのは、浮遊感と、疾走感と、そして温かい体温。
「助かったぞ、グレン!」
ドラゴンの牙に貫かれる直前、王と少年を背に浚い助けたのは、炎のような毛皮をした、天翔ける四つ脚の獣だった。
赤い狼のような獣は、炎の鬣を王に撫でられ、心地よさそうにぐるると喉を鳴らした。
「……綺麗な子」
思わず呟いた少年に、王が笑う。
「グレン・グランデルという。聞いたことはあるだろう? 赤の国の王獣だ」
「お、王獣って……!」
王獣と言えば、円卓の十二国にそれぞれ一頭ずつ存在する守り神のような獣だ。その立場は国王と対等であるとされ、国王ですら敬意を払うという神聖な存在である。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
135 / 228