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第1章 かなしい蝶と煌炎の獅子 〜不幸体質少年が史上最高の王に守られる話〜
市街戦8
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「本来王獣にこのような騎獣の真似事をさせるのはご法度中のご法度なのだが、まあ、緊急事態だ。仕方あるまい。私は空を飛べるほどの風霊魔法は使えぬし、それにこいつはとにかく速いのでな。敵の攻撃を避けるのも容易いだろう」
その言葉通り、王と少年を乗せた王獣の動きは速かった。襲ってくるドラゴンの牙や爪を難なく避けながら、口から炎を噴き出してドラゴンへと放つ。しかしやはり、それも黒い渦に飲み込まれてしまった。
「中途半端な魔法は通用しないのだ。お前は渦に触れぬギリギリまでドラゴンに寄ることに集中しろ。後は私がやる」
王の言葉に咆哮で応えた王獣が、速度を上げてドラゴンの胸元へと肉薄する。その瞬間を逃さず、王が握った剣を構え、黒い渦にぶつけるようにして振り切った。
途端、ドラゴンが悲鳴のような咆哮を上げる。王の刃が空間魔導を貫通して、鱗に覆われたドラゴンの肉を斬り裂いたのだ。
「馬鹿な! そんな剣ごときで空間を斬っただと!?」
叫ぶデイガーを、王が見上げる。
「グランデルが鍛鉄の国であることを忘れたか? 赤の国の武具はどれも一級品。その国王である私の剣は、リアンジュナイル大陸で最も優れた剣だ。空間ごとき、斬れぬ訳がなかろう」
不敵に笑んで見せた王だったが、内心では次の一手を考えあぐねていた。
(やはり浅いか。グレンに乗った状態で振るう剣では膂力が足りんな。いくら続けたところで掠り傷しか負わせられないとなると、さて、どうしたものか)
胸の内で思案する王に、デイガーが歪んだ笑いを浮かべた。
「それはそれは大層なことだ! ならばこれならどうだ!」
叫んだデイガーが、ドラゴンを再び急降下させる。だが、今回狙われたのは王でも少年でもない。ドラゴンが真っ直ぐに目指す先に居たのは、逃げ遅れたらしい少女だった。それを見て、王が目を見開く。
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