アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
第1章 かなしい蝶と煌炎の獅子 〜不幸体質少年が史上最高の王に守られる話〜
市街戦9
-
「グレン! 風霊! キョウヤを頼んだ!」
風霊がいれば、少年が獣の背から落ちることもないだろう。それよりも今はあの少女を助けなければ。
落下の衝撃を風霊に緩めて貰いながら着地した王が、すぐそこにいた少女に手を伸ばそうとする。だが、そのときにはもう、ドラゴンが眼前まで迫っていた。
その間、瞬き二度もなかっただろう。そのわずかな時間で、しかし王の判断は迅速だった。己と少女とドラゴンの位置関係から導き出される正解は、たったひとつだったのだ。
流れるように右手の剣を捨てた王が、その腕で少女を抱き寄せる。そして王は、左の腕を身体の前で構えた。
「火霊!」
叫びに応え、その左腕に炎が纏わりつく。そして王は、炎を存分に纏った腕で、襲い掛かる鋭く巨大な牙を受け止めた。と同時に、後方へと跳躍する。少しでも牙の衝撃和らげようとしたのだ。事実、その判断は正しかった。だが、いくら勢いを殺したところで、元の力が強大すぎた。
「っ!」
牙が腕を深く抉り、突き刺さる。このままドラゴンが口を閉じれば、腕が食い千切られてしまうだろう。だが、この状況にあって、王は冷静だった。何故ならば、これを見越した上での判断だったのだから。
「……火炎爆砕《グラン・フレア》」
王が呟いた瞬間、牙に貫かれた左腕を起点に、凄まじい熱量が膨れ上がり、弾けた。王をも巻き込んだように見えた爆発はドラゴンの口を焼き、竜が悲鳴のような咆哮を上げて頭を振る。その口から、何かが弾かれたように飛んだ。
王獣の上から戦場を見ていた少年は、飛んでいったそれを見て、悲鳴のような声を上げた。
「ロストさん!」
弾かれて宙を舞ったのは、少女を抱えたグランデル国王だったのだ。
少年の叫びに、王獣が飛ばされた身体に向かって駆ける。そのまま王の背後に回り込めば、風霊がその身体を掬い上げて獣の背へと降ろしてくれた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
137 / 228