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第1章 かなしい蝶と煌炎の獅子 〜不幸体質少年が史上最高の王に守られる話〜
市街戦11
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「避けろグレン! これは私の魔法だ!」
命じるまでもなく、王獣は炎の猛攻を全て躱したが、火がそのまま市街に向かって降っていきそうになっているのを見た王が、慌てて叫ぶ。
「火霊! 相殺しろ! 街を焼いてはいかん!」
言われ、奔った炎が魔導陣から放たれた炎にぶつかり、火の粉を上げて弾けさせる。
王の言葉通り、この火は先ほど王が放った炎の矢であった。
(あの黒い渦で吸収した攻撃は、魔導陣を使って返すことができるということか)
中途半端な攻撃は無意味どころか逆効果らしい。これはいよいよ手詰まりだ。少年には大丈夫だと言ったものの、実を言うと左腕はもうほとんど使い物にならない。利き腕ではないから捨てて惜しいものではなかったが、それでも損害は損害である。
取り敢えずはと風霊に命じて地面に投げたままの剣を拾ってきて貰ったは良いが、この剣による攻撃も、そこまで有効な手段であるようには思えなかった。
(せめて地上を這ってくれれば倒しようがあるものを)
いっそ両翼を落としてしまおうかとも思ったが、この巨体が地面に落ちれば、やはり街が破壊されてしまう。これ以上他国に損害を出すのは避けたかった。
だが、悩む王の目が上空に飛ぶ何を捉えた途端、彼はふぅと息を吐きだした。どこか安堵したようなそれに、少年も釣られて空を見上げる。目を凝らして見ると、こちらに徐々に近づいてくる獣のようなものが見えた。
「ようやく来たな。安心しろキョウヤ」
「え?」
首を傾げた少年を見て、王が微笑む。
「この勝負、私の勝ちだ」
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