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第1章 かなしい蝶と煌炎の獅子 〜不幸体質少年が史上最高の王に守られる話〜
国王の一手1
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ギルガルド王国の空を、雷を彷彿とさせる光沢質な金の毛並みを持つ獣が駆けている。時折ばちばちと燐光を散らすその四つ脚の獣は、雷を司る幻獣、ライデンだった。人前に滅多に姿を見せることのない希少な幻獣が、何故こんな場所に姿を現したかというと、この幻獣が騎獣だからだった。
空を駆けるライデンの背にいる人物は、後ろ髪のひと房だけを長く伸ばした、淡い金髪の美丈夫。そう、グランデル王国宰相、レクシリア・グラ・ロンターである。そしてその後ろには、黒紫の癖毛をした青年が乗っていた。
「疲れてないか、グレイ」
後ろに乗っている青年、ロンター家筆頭秘書官であるグレイを振り返れば、彼は少しだけ肩を竦めて見せた。
「疲れないとでも思うんですか? 正直今すぐベッドにダイブして寝たいです。まあでも、アナタよりはマシですよ」
グレイの言葉に、レクシリアが苦笑する。
確かに、ライデンの背で多少は眠れたのだろうグレイと違い、レクシリアは丸一日ほとんど寝ずに騎獣を駆ってきたのだった。
「まあ、あいつの無茶苦茶には慣れてるからな」
急に部屋に飛び込んできた王獣に、筆頭秘書官と共に早急に王の元へ馳せ参じろと伝えられたときは、さすがのレクシリアも目を剥いた。王獣に伝言なんぞ頼むなだとか、いきなり来いと言われても国王の生誕祭を目前に控えた今宰相が国を空けられる訳がないだろうだとか、言いたいことは山ほどあったが、勅命である。
グランデル王国において王の勅命とは、王から寄せられる信頼そのものであった。たとえそれがどんなに無茶なものだったとしても、必ずやり遂げられると王が信じてくれたから下されたものなのだ。であれば、臣下はそれに応えてこそだろう。
こういうことを言うと、厳密にはグランデル国民ではないグレイは、これだから宗教国家は、などと言い出すのだが、グランデル王国には宗教の自由がある。そのため単一の神を崇めるよう強制されることはなく、宗教国家とはほど遠いとレクシリアは思っていた。尤も、こう返答するとグレイはいつも嫌そうに顔を顰めて返すのだったが。
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