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第1章 かなしい蝶と煌炎の獅子 〜不幸体質少年が史上最高の王に守られる話〜
国王の一手4
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そう言ったレクシリアが、結界の膜に手を翳す。
「見た限り、これには探知機能もあるみたいだ。ただ突き破るだけじゃこっちの存在がバレちまう訳だが、それでも良いのか悪いのか……。……隠れて行くか」
「できるんですか?」
「少しばかり調整が難しいがな」
そう返し、レクシリアは風霊と水霊の名を呼んだ。呼びかけに応えて現れた彼女らに指示を出したレクシリアの指先が、結界に触れる。するとそこに針で刺したような小さな穴が開いたと同時に、水霊による水が入り込み、結界を補完するように膜を張った。それにレクシリアが手を翳すと、そのままゆっくりと、水の膜に覆われた穴が広がっていく。
「……何をしたんです?」
「隠密効果を乗せた風の針で、探知されないで済むギリギリのサイズの穴を結界に開けた。そこに、この空間結界と限りなく質を似せた水を張ったんだ。こうすりゃ、じわじわと穴を広げる分にはバレずに済む。多分な。というか、これ以上は俺には無理だ」
「これ以上は、ねぇ……」
レクシリアはなんでもないことのように言ってのけたが、その実、この魔法が非常に難しいことをグレイは知っている。魔法適性こそないグレイだったが、魔法に対する知識はそれなりに深いため、魔法における制御や調整の難しさは理解しているのだ。
魔法は、精霊に頼み、その力を貸して貰って現象を生み出すものだ。だからこそ、精霊の気分ひとつでその効果や威力にはブレが生じる。そんなもので、針の先ほどの穴を開け、過不足なく水を満たすなど。
それは、グレイが思っている以上に繊細で確かな精度が求められる魔法なはずだ。だが、グランデル王国の宰相は、平然とそれをこなしてしまった。
「……判ってはいましたけど、なんというか、アナタ、心底腹立たしいですね」
「はぁ? 何がだよ」
「いーえ、別に」
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