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第1章 かなしい蝶と煌炎の獅子 〜不幸体質少年が史上最高の王に守られる話〜
国王の一手8
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「水霊! 火霊! |虚影の膜《ミラージュ》!」
続くレクシリアの言葉に、グレイが記憶を辿る。
|虚影の膜《ミラージュ》。水霊と火霊という相反する二つの属性の精霊の力を使う、幻惑魔法の一種だ。恐らくは、敵に見つからないように、背景と同化する幻覚のベールを被せたのだろう。
「リーアさん! 何事ですか!」
「ロストから伝言があった! あの馬鹿、よりにもよってここで極限魔法ぶっ放す気だぞ!」
「はぁ!? 何考えてるんですかあのポンコツ王!」
極限魔法と言えば、始まりの四大国の国王しか使えないとされている最上級の精霊魔法である。グランデル国王が司る火霊の極限魔法ということは、
「街ひとつ吹っ飛ばす気ですか!?」
そんなことをすれば、金の国の民も無事では済まない。他に道がないのであればあの王は迷わずそれを選択するだろうが、今がその時であるとは考え難かった。
「だーかーら! そのために俺らが呼ばれたんだろうが!」
「極限魔法なんて出されたら、オレたちが居たところで何にも、…………は?」
途中で言葉切って、暫しの沈黙の後、グレイが間の抜けた声を出した。
「まさかとは思いますけど、アレを使えってことですか?」
「まさかも何も、この状況で俺たち二人をセットで呼び寄せる理由なんてそれくらいしか思い浮かばねぇだろ」
「それにしたって馬鹿じゃないんですか!? ろくに試験だってしてないのに!」
「それでもあの馬鹿がやれっつーんだからやるしかねぇだろ! 悪く言えば無責任だが、良く言えばそれだけ信頼されてるってことだ! 腕の見せ所だぞ、冠位錬金魔術師!」
「ああもう、判りましたよ! やれば良いんでしょうやれば!」
酷く無茶苦茶な要求をされているのは事実だったが、あの王がやれと言っているのであれば、やはりそういうことなのだ。
自らの国の国王の期待に応えるため、二人は敵地へと赴くのだった。
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